『ビジネス・ジャッジメント・ルール』とは?
もくじ
日本語でいうと経営判断の原則
いきなりですが、皆さんは
ビジネス・ジャッジメント・ルール
ってご存知ですか?
今日のスマイル☻ブログは、この
ビジネス・ジャッジメント・ルール
についてご案内したいと思います。
まず、この
ビジネス・ジャッジメント・ルールを
日本語にすると
経営判断の原則
と呼ばれるものに訳されます。
では、この経営判断の原則は
誰の何に対して適用されるかというと
株式会社の取締役
に対してなされるものです。
法律上の取締役をおさらい
株式会社の取締役について
すこしおさらいをすると
取締役は会社を代表して
会社を運営する“偉い人”
というイメージがありますが
法律上は、
会社からその会社の経営を
委(ゆだ)ねられた人
ということになります。
他人に、ある仕事を
自分の代わりに任せることを
「委任(いにん)」と言って
この「委任」は
会社法という法律ではなく
民法という法律に
定められている概念です。
したがって、
少し難しい説明の仕方だと
株式会社の経営は
会社の所有者である株主が
取締役に委任している
ということなのですね。
善管注意義務
この「民法の委任」
というルールによると
仕事を委任された人である受任者は
(この場合は取締役)
「善良なる管理者の
注意をもって
事務を処理する義務」
を負うことになります。
この義務の事を、一般的に
善管注意義務
と呼びます。
株式会社の取締役が
会社を経営するうえで
法令または定款に
違反する行為をすると
善管注意義務“違反”
となり
任務を懈怠(なまけた)したとして
会社に損害を与えた場合は
会社に対して
責任を負うことになります。
何でもかんでも取締役の責任?
ところが、
会社の経営にとって
リスクはつきものです。
例えば、会社経営の一つとして
手がけたプロジェクトで
赤字を出してしまった…
なんてことは
当然に起こりうることで
特別なことではありません。
にもかかわらず
会社に赤字が発生するたびに
取締役に、その責任を
取らすようなルールであったとしたら
取締役はいつもビクビクしながら
会社を経営しなければならないですし、
リスクを恐れ
思い切った経営もできません。
そもそも、取締役になる人が
誰もいなくなってしまいます。
では、本当に、
株式会社の取締役は
会社で発生した損害に対して
“全ての”責任を取らなければ
ならないのでしょうか?
ビジネス・ジャッジメント・ルール
結論から先に述べますと
取締役はどんな場合でも
会社の損失に対して
責任を負う訳では
ございません!!
むしろ、お金で弁償しなければ
ならない程の責任を負うことなど
“まれ”(異例)といいますか
法律上はかなり厳しく判断しています。
確かに、
株式会社の取締役が
会社の経営に関して
“注意を欠(か)いた場合”は
善管注意義務違反となり
損失を賠償(弁償)する義務
を負いますが
たとえ、取締役の経営判断が
結果的に会社に赤字などの
損失を発生させた原因となったとしても
その取締役の経営判断が
誠実で合理的な範囲で
なされたもの
だったのであれば
“善管注意義務違反”
には当たらない
とされ、過去の裁判でも
そのような判断がなされています。
このような、
取締役の経営判断により
会社に損失が発生しても
その経営判断が、
誠実で合理的な範囲のものであれば
取締役に損失を弁償する義務はない
ということを
ビジネス・ジャッジメント・ルール
(経営判断の原則)
と呼びます。
したがって、この
ビジネス・ジャッジメント・ルール
にのっとれば
取締役もリスクを
(あまり)恐れることなく
新しい事業に挑戦するなど
ノビノビと会社経営に
勤(いそ)しむことができる訳です!
もちろん、その経営判断には
誠実で合理的なもの
が求められるので
株式会社の取締役は
自身の“誠実さ”や
“合理的な”判断力を
みがく必要があるのですね!
おことわり
最後に一つおことわりしておきますが
今回ご案内した
ビジネス・ジャッジメント・ルールは
あくまで、
誠実で合理的な範囲の経営判断により
会社に発生してしまった
赤字などの金銭的な損失を
いちいち弁償しなくてもいい
ということであって、
いくら誠実で合理的な範囲の
経営判断をしていたとしても
株主総会の決議により
取締役を解任(クビ)にさせられたり
取締役の報酬(給料)を減らされたり
するのは
ごく普通のよくある話であり
ビジネス・ジャッジメント・ルール
とは全く違う話ですので
間違って覚えないように
お願いいたしますね。