法律上の「社員の退社」の方法とは?
もくじ
前々回のブログにて
「社員の退社」について書きました。
法律上の「社員の退社」とは
株式会社の出資者である株主
または
合同会社の出資者である社員が
その株主または社員の地位を
やめることをいいます。
今回のブログでは
その「社員の退社」の方法
についてご案内したいと思います。
※退職願を出して”法律上の社員の退社”を
することはできません。
出資金の払い戻しはできるのか?
まず、株式会社の株主または合同会社の社員
(以下「出資者」とします。)が
会社の業績悪化により
会社の財産が減っていくことに
不安を感じたときなどに
「出資者を辞めたいから
出資した分を“全額そのまま”
返してくれ!」
というような
“出資金の「払い戻し」”は
原則としてできません。
つまり、出資金の「払い戻し」は
会社の資本金を減らすということです。
これは、このような
出資者への「払い戻し」
を認めてしまうと
会社の財産が
出資者の気まぐれにより
簡単に減ってしまうことにもなり
他の出資者だけではなく
会社の債権者や取引先
そこで働く人たち等の立場を
不安定にさせてしまうからです。
株式を譲渡することによる退社
さて、そうなると出資者が
その出資者たる地位を辞めるには
どうすればいいのでしょうか?
その方法が
“株式の譲渡”です。
(※株式会社の場合です)
つまり、
他人に株式を売る
などして譲渡することで
自分は株主ではなくなります。
つまり「社員を退社」したことになります。
例えば、
ある株式会社に1,000万円を出資した株主は
他人にその株式を買ってもらい
それが1,500万円で売れれば
500万円が儲かったことになりますが
会社の業績悪化が不安になり
他人に500万円で売ったなら
逆に500万円の損をすることになります。
ただ、会社が倒産して、その株式の価値が
0円になるよりかはマシですよね。
もしかしたら、これが“株式投資”の
醍醐味という投資家に方も
いるのかもしれませんね。
譲渡制限株式はどうするのか?
当スマイルブログでも
何度もご案内していますが
株式会社でも
“中小企業”と呼ばれる株式会社は
会社にとって不都合な人が
株主にならないように
その発行株式には
“譲渡制限”
を付けておくのが普通です。
したがって、
譲渡制限が付いた株式を持っている株主は
法令もしくは会社の定款に従い
その株式の譲渡を
株主総会や取締役会や取締役の
承認をもらってからではないと
株式を譲渡できません。
そうなると、
せっかく出資した株主が
お金を得る目的で持っている株式を
誰かに売ろうとも思っても
会社の承認が得られなければ
株式をお金に変えられず
不利益をこうむるのではないか…
という問題が出てきますが
その心配はありません!
会社が、株主に株式の譲渡を
承認しなかった場合には
株主は、会社にその株式を
買い取らせることができ
(※あくまでも“買い取らせる”
ことになり、
資本金が減る「払い戻し」
ではありません。)
又は、会社が指定する
指定の買取人に、買い取らせることが
できることを
法律(会社法)は定めていますので
株主が
「株式を買ってくれる人がいない…」
(つまり、社員を退社できない…)
といって困るということは
譲渡制限株式を持っている株主には
あまり関係ないことだといえるでしょう。
合同会社の場合は
なお、合同会社の社員が
出資した金額を回収するために
社員を退社するには
「総社員の同意」
が必要となります。
※定款で別段の定めがない場合です。
合同会社の場合は
出資者=経営者
になりますので
自由に“社員たる地位”を譲渡できるとなると
合同会社の経営が無茶苦茶になる可能性が
あります。
そのため、出資者たる地位の譲渡
つまり、社員の退社の方法は
株式会社より若干厳しい要件が
定められているのです。
まとめ
法律上の「社員の退社」とは
出資者がその出資者たる地位をやめること。
出資者は会社に出資金の「払い戻し」を
求めることはできない。
株式会社の場合、出資者である株主は
株式を他人にすべて譲渡することで
社員を退社することができる。
譲渡制限株式であっても
会社または指定買取人に譲渡が可能。
合同会社の社員の退社は
総社員の同意が原則として必要。
(※法令、定款に別段の定めがない場合)
では、また次回に。